たねやの嫁です。
昨日、「ちば食べる通信」の取材で、姉崎だいこんについて、色々なシーンを見ていただくのに、私も久々に姉崎蔬菜組合(JA市原市)の出荷場を見学しましたが、現時点では大根が順調に出荷されていることもあり、活気に溢れた、とても感動的な様子で嬉しくなりました。
5年前、塩害の影響が出る台風が発生し、銚子や三浦の大根に害が出て大根の値が高騰しました。
姉崎だいこんは、被害が出なかったこともあり、品薄のピークでは、普段なら未成育で捨てられる小さい大根までも畑から消えるぐらいの状態でした。
ただ翌年から4年間、価格が通常の価格(1年間経営が回る程度)を下回る、大打撃に見舞われており、多くの大根を捨ててしまわなくてはいけない状態に苦しみ、農業を続けられるか?なんの為に自然と闘い、決して楽ではない作業をしているのか?と、悩む日々が続いていました。
その主な原因は、下記の3つです。
1.日本で災害があった4年前、商社が中国からのだいこんを仕入れた際、スポットではなく、定期的に輸入をする契約を条件にされ、国内が豊作で市場に大根が溢れている状態でも、中国産のものまで入ってくることになる。(需要と供給のバランスが崩れ価格が下落)
⇒消費者としては、安いと助かるというイメージがありますが、直売所などが無い都市部などでは、国内の安全で新鮮な野菜が手に入りにくい状態になります。
2.農家用の保険が2種類存在し、産地の切り替えや出荷調整などバランスの良い供給状態が保てない状況が起きている。
これは、価格安定(比較的に保険料は安い)と収入保険(保険料は高め)です。この、価格安定の保険が、産地の切り替え時期に大きく影響をおよぼします。
野菜には、旬があり、大根であれば、夏の間は涼しい北海道や青森産のものが市場に出回ります。ただ冬になれば九州、千葉、神奈川など、海風や気候で、雪などの影響を受けにくい地域で大根が作られ市場に出荷されます。
しかし、価格安定の保険に入っていれば、出荷した際、通常値より安値だった場合の差額で保険が適応されます。夏の大根の価格は高いのに、季節の変わり目で他の産地が新しい大根が出てきます。北海道や青森産は、終わりかけで物は古かったり、状態が悪いものになるので価格が下がります。でも出し続ける事で、保険の対象になるのです。そうすると、旬が過ぎても安くてマイナスになっても、保険対象となれば出し続けてきますよね。
では、収入保険に入っているところも、価格安定に入れば?と思われるかもしれませんが、価格安定は、あくまでも出荷した量に対してです。
台風や気候の変動により、大根が生育しない、全滅したなど、出荷に至らない状態だと対象になりません。
収入保険は、数年間の売上価格で計算されるので、大きな災害などの時は助かります。今回のようにコロナなどの影響の場合においても外食が減り、市場に大根があふれ、価格が大暴落した場合は、出荷制限します。
つまり、適正な供給状態を保てるよう産地内で調整していくのです。これは決して、食べられる野菜を捨ててるというマイナス面というよりは、消費者の方にとっても、適正価格で良い状態の野菜を手に入れやすくなるという事で長い目で見ると良い状況といえます。
3.他の大物野菜の価格の暴落にも影響を受ける。
現在、大根の価格は安定しています。高くもなく、低くもない状態です。この状態で春まで続いてくれれば農家は暮らしていけます。
しかし、キャベツ、白菜などが安くなってきました。消費者にとっては、安いキャベツや白菜で野菜の繊維を食べて、大根は、また安くなってから買おう!と思いがちですよね。
そうすると、大根が売れ残り、市場に在庫がたまります。そして値段が下がる。
適正価格が維持できないというわけです。野菜全体が適正価格を下回らず、安定供給ができる状態で生産していくことを目指していくことが重要というわけです。
これは、日本の国土で、気候、災害などの影響を受ける地域と比較的にまだ影響が出ていない地域で、農業格差がでてきていると言えます。
新鮮な野菜、美味しい野菜、旬のものを地域のものを・・・
というのが、遠い過去のようになる時代に向かっていくのかもしれません。
農村の風景が無くなり、外国から輸入され、エネルギー問題などで燃料費も高騰することで、鮮度が落ちた、防腐剤つきの高い野菜を食べる未来を望む人はいないと思います。
農家って大変だよね。
努力が足りないんじゃない?
昔ながらではなく、もっと工夫したらいいんじゃない?
もしかすると、嫁である私も、過去のように都内で働き暮らしていたら、他人事のように感じてニュースを聞き流してしまうかもしれません。
しかし実際は同じ国土に住み、自分が口に入れる食材の未来につながっているのです。
今日のNHKで放送される内容は、夫がリモートで2時間程度インタビューを受けた中の一部だと思いますが、雨が2日続き、畑がドロドロの中、トラックを入れられず、手で抜いた大根を手渡しで丁寧に収穫し、さらに雑誌の取材も対応し、通常より、かなり疲れた状態でした。
活気に溢れた出荷場でも、雨の後の大根は水を含み、ピチピチパンパンで、そっと取り扱わないとすぐにパンとヒビが入ります。
新鮮な証拠ですが、傷が入れば、ダメな大根として安くなってしまうため、働く人たちも、丁寧にそっと扱っていました。
その姿を見て、ありがたく、泣けてきました。ありがとうという気持ちです。
手を抜かず、働く姿も知っていただきたいです。
サラリーマンならお給料が無ければ働くのやめますよね。でも農家で従業員の方達にお給料を払う側は、自分のお金が無くなっても種をまきます。コロナの飲食店のオーナーの方も同様だったと思います。
未来のために、進むのは、明るく生きていく事を諦めないからです。
どうか、今年の冬も、ピチピチの美味しい大根で体をあたためて、元気に健康な日々を送ってください!